我が闘争 新旧比較

アドルフ・ヒトラー著「我が闘争」
戦前の抄訳版と戦後の全訳版の比較です。
抄訳版はhttp://hibase.web.fc2.com/からダウンロードしたもので、
研文書院による版のようです。←文字起こししましたkenbun.txt
全訳版はAmazon等で購入できる角川文庫版です。

何故、一見非人道的であるユダヤ人の国外追放を行うに至ったか、
その点が曖昧にされていることに加え、
民族主義的思想が優生学的思想にすり替えられているために、
潔癖主義の狂気の独裁者として描かれてしまっているのが戦後の全訳版です。

この幼稚な思想でドイツ民族のナショナリズムを高揚できるか。
合法的に、議会の過半数の支持を得て「独裁」政権を樹立できるか。
(独裁まで許可されたということはそこまで信頼が厚かったということです)
答えは勿論イイエです。

特に重要と思われる部分の比較を次に示します。

戦前の抄訳版戦後の全訳版
日本の潰滅を計るユダヤ人

 ユダヤ人の理想は、一切の国を瓦解せしめて、全世界を雑種化させ、然る上で国際的一大国家ユダヤ王国を建設することにかゝつてゐる。だから世界の何地にせよ、確かりした独立国家が存在する限りは、彼等の理想は阻まれるのである。
 欧米に於ける彼等の民族雑種化政策は、或る程度まで成功して来たと云はねばなるまい。それは彼等の容貌が、欧米人として通用するといふ条件に恵まれてゐたからである。ところで日本と云ふやうな、東洋の特殊な人種に対しては、ユダヤ人の雑種化政策は之を施す方法を断たれてゐる。そこでユダヤ人は、その政治、経済、宣伝のあらゆる力を動員して、日本を倒し得る力を持つた国家に巧みに働きかけ、それらの力に依つて日本を倒させやうとしてゐる。(注――日支事変がそれであり、日ソ関係がそれであり、米国の挑戦的態度が即ちこの事を明かに物語つてゐる。)
 ユダヤ人は彼等の企図する世界独裁を成就せしめるためには、どうしても日本を倒さなければならない。そのことはユダヤ人新聞が臆面もなく「日本の帝国主義と日本とを打倒しなければならぬ」と屡々放言してゐることだけでも明瞭である。
 ナチ党がユダヤ人を正面の敵として、彼等との闘争否、彼等の撲滅を決意した理由は実はこゝにある。我々は全世界に向つて、怖るべきユダヤの陰謀を知らしめる責任を感ずる。我々はユダヤ人とアリアン民族を混同しては不可ない。英国人とユダヤ人とを混同しては不可ない。我々の敵は常にユダヤ人であることを銘記しなければ不可ない。
日本とユダヤ人

 ところでユダヤ人は、自分達の千年にわたる順応によってヨーロッパ民族の基礎を掘り崩し、かれらを種族の性格を失った雑種に養育することはなるほどできるにしても、しかし日本のようなアジア的国家主義国家に同じ運命を与えることはほとんどだめだということをじゅうぶん知っている。今日ユダヤ人はドイツ人、イギリス人、アメリカ人、そしてフランス人のふりをすることはできるが、黄色いアジア人に通じる道はかれらに欠けている。したがってかれらは、日本という国家主義国家をやはり今日同じような構造をもつ国々の勢力によって破壊しようと企てるのであるが、それはこの危険な敵のこぶしによって、最後の国家権力が防御力のない諸国家を支配する専制に変わってしまう以前に、その敵を片づけるためである。
 ユダヤ人は自分達の至福千年王国の中に、日本のような国家主義国家が残っているのをはばかり、それゆえ自分自身の独裁が始められる前にきっちり日本が絶滅されるよう願っているのである。
 したがってかれらは、以前にドイツに対してやったように、今日日本に対して諸民族を扇動しており、それゆえ、イギリスの政治がなおも日本との同盟を頼りにしようと試みているのに、イギリスのユダヤ人新聞はすでにこの同盟国に対する戦争を要求し、民主主義の宣伝と「日本の軍国主義と天皇制打倒!」のときの声の下に、絶滅戦を準備するということも起りうるのである。
 このようにして、ユダヤ人は今日イギリスでは不従順となってしまった。
 したがって、ユダヤ人による世界の危機に対する闘争はイギリスでも始められるだろう。
 そしてまた、外ならぬ国家社会主義運動は自己のきわめて巨大な課題を果さなければならぬ。
奥付
昭和十五年九月五日 印刷
昭和十五年九月十日 発行
昭和十六年二月十一日 五版発行

ヒツトラーの我が闘争
編者 水野宏一

東京市本郷区元町一丁目一番地
発行者 橋口景二

東京市神田区鎌倉町十一番地
印刷者 阿部喜太郎


東京市本郷区元町一丁目一番地
発売所 研文書院
わが闘争
(下)全二冊
平野一郎(ひらの いちろう) ・
将積茂(しょうじゃく しげる) 訳
角川文庫

昭和四十八年十月二十日 初版発行
平成九年四月一日 三十版発行

発行者 角川歴彦
発行所 株式会社 角川書店

角川文庫ソフィア 222
ISBN4-04-322402-8 C0131

比較は以上に留めます。というのは、
文章量が増されていたり、混乱した文章になっていたりして、
ほとんど比較が不可能だからです。

しかし上記の比較からだけでも、
「欧米人」をわざわざ「ドイツ人、イギリス人、アメリカ人、そしてフランス人」
と、長く読みづらくしていたり、
「~ということも起りうるのである。」と、断定を仮定に置き換えるやり方、
さらにはまた「黄色い」アジア人と、余計な一言をつけることで
ヒトラーへの嫌悪を煽るやり方等がうかがえると思います。

特に最後の「黄色い」などといった余計な修飾は
政治の世界では言語道断であるはずです。
軽率にもこんなことを書いてしまえば、
敵対勢力に格好の批判材料を提供することになります。
ところが、戦後の版では随所にそれが見られます。
是非批判してくださいといわんばかりです。


文章を長く難しくして読みづらくしようとする意図は全編に亘り見られます。
そのため、戦後の版はどこを読んでもまずは混乱させられることになるのですが、
それでもポイントはいくつかあると思います。
上巻の、「第六章 戦時宣伝」と「第十一章 民族と人種」は興味深いです。

「第六章 戦時宣伝」では、大衆を蔑視する内容が多くみられます。
大衆は愚かだから、宣伝はかくあるべき。といった内容です。
しかし、「わが闘争」の読者はまさに大衆であり、ナチ党の支持者であるはずです。
このあからさまな侮蔑を、読者は不快に思わなかったのでしょうか。

「第十一章 民族と人種」では、言わずと知れたアーリア人優生思想が展開されています。
アーリア人種は優等人種であり、すべての文化の創始者であり、血の純潔を保たなければいけない。
穢れた血、黒人や黄色人種はもちろん、特にユダヤ人との混血で汚染してはならないという内容です。

戦前の版では、これはほとんど帰属意識の問題であるはずです。
ラプランド人と比較した軽率な部分はありますし、
そして実際にはもう少し複雑な問題であるのは確かでしょうが、それでもいわば、
・外国人とのハーフであれば、純粋なドイツ人ほどにはドイツに帰属しないだろうということ。
・そして彼らが少数であるうちはいいが、多数を占めるようになれば、国家概念の瓦解につながる。
ということであり、能力の優劣はまた別問題のはずです。
性的な事柄もちらほら見え隠れし、とても一般受けする内容とはいえません。


ある思想や分野を否定するときに、ただ否定するのではなく、逆に、
破廉恥であったり下品であったりする人間に「支持」させることで
嫌悪感を煽るやり方はよく見られます。
話題にすることがはばかられ、結局議題に上らない。
見て見ぬふりという事態になることもしばしばです。

「わが闘争」では、ヒトラーは痛烈なユダヤ批判(ただし曖昧で混乱した内容)を行っていますが、
ヒトラー自身が狂人として描かれているため、
上記の仕組みもまた効果を発しているとはいえないでしょうか。


これらの理由から、当サイトの作者は、戦後の「わが闘争」が偽物であることを主張します。
同時に、ナチス・ドイツにまつわる不潔な伝説の大部分が虚偽であると考えます。
このホームページで述べたこと全てが当を得ているとはいいませんが、
考えるきっかけ、歴史の真相解明の一助になれば幸いです。




// その他、メモ。
// 間違いはあるかもしれません。参考程度に。

・ユダヤ人
ユダヤ人と言うから誤解を招く。ユダヤ国とその国民とでも言ったら良い。(国のあるなしは別にして)
国民には当然、様々な者がいる。
国がドイツと戦争を始めた。だから、敵国であるドイツに居場所がなくなるのは当然。
国のために個人を否定して良いわけではないし、個人間の親交等がなくなるわけでもない。
また、ここでいうユダヤ人とは、聖書のユダヤ人とは別の民族のようである。(要研究)


・資料の信憑性について
アジア歴史資料センターで閲覧できる戦前のものとされる文章は、戦後の全訳版と同じ形式のようである。
外務省情報部の印まで押されているが、これを捏造と言い切れるか。
(戦前は抄訳版であり全訳版ではあり得ない…このことから切り崩せる可能性もあるが、
さしあたり、無視するのが良いかもしれない。)
同時に、研文書院版が捏造でないことを如何に証明するか。
他の戦前に発行された版は入手可能か。(捏造されないことを祈る)

・研文書院版が本物である可能性について
捏造が目的なら「ヒトラーの小伝」などつけないほうが良い。
奥付もつけないほうが良い。研文書院版であることを知らせないほうが良い。
ナチスの実際の行動と矛盾がない。
文章、思想が信頼できる。この者になら政治を任せられると感じる。

・戦後の版が捏造である可能性について
思想が幼く頼りない。いちいち危なっかしい。
自らの品位を貶めるような単語をわざわざ使ってくる。
大衆をバカにする内容。大衆即ち読者である。


終戦は昭和20年(1945年)
なお、ドイツ語の原著の時点で改竄されているようです。

歴史に誤りがあるならば訂正されるべき。それが先ず第一。
次いで、ヒトラーの政策や思想等から、日本の将来につながるヒントを得られれば尚良。


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